夏を乗り切るケア【基本編】 ~リンパ浮腫、わたしたちのリアルクローゼット~


              夏を乗り切るケア【基本編】 ~リンパ浮腫、わたしたちのリアルクローゼット~

リンパ浮腫にはおしゃれの悩みがつきもの。
ここでは、enStylers*のクローゼットの中にある愛用品、リアルクローズをご紹介します。
さあ、わたしたちと一緒におしゃれの旅に出かけましょう!
今回は、夏を乗り切るケア【基本編】。汗、ムレ、ジリジリ熱い太陽、虫刺されなど、夏はenStylersにとって、手ごわい季節。けれど、その分快適さを追求するのびしろがたくさん!
今回は番外編として、化粧品会社出身&自身も下肢リンパ浮腫であるencycloStyle編集部の水田が、夏を楽しく心地よく過ごす味方になるアイテムやケア方法を、「うるおす」「まもる」「おとす」の3つの観点からご紹介します。

*enStylers:リンパ浮腫とともに、自分らしくstyleをもって生きるひとたち

 

吉備 悠理(きび ゆうり) 


大学医学部在籍中にリンパ浮腫患者のファッションの研究に着手。卒業後はアパレルメーカーに就職。ファッションを通じた生活支援を目標として情報発信などをおこなう。

 

 

うるおすケア

 

夏の肌は、汗や皮脂のせいで気づきにくいけれど、紫外線や冷房で実は意外と乾燥しています。さらに、常に硬い着衣に触れている脚や腕の肌は、夏でもうるおいが不足しがち。

肌のうるおいが不足すると、バリア機能が低下して、リンパ浮腫に大敵の刺激や炎症が起きやすくなってしまうことに。

べたつきが気になる季節でも、きちんと保湿ケアでうるおすことで、日差しを浴びた後の乾燥や、汗などの刺激も受けにくい、健やかな肌を保つことができます。

季節に合った快適な保湿ケアで、夏もうるおった柔らかな肌を目指しましょう! 

 

 

Hint To Choose

夏の肌は水分が不足しがちなので、みずみずしい伸びの良いクリームや、水分たっぷりのジェルタイプがおすすめ。

家族で使える大容量のもの、進んで使いたくなるお気に入りの香りのものなど、ライフスタイルに合わせて、選んでみて。

ケアが楽しくなるものを選ぶことが、毎日サボらずに続けるコツです!

 

 

Care Point 

保湿剤を塗るときは、こすらないようにやさしく。無駄な力がかからないよう、手のひら全体を密着させて伸ばしましょう。保湿剤を手のひら全体に薄く伸ばしてから、肌になじませると、負担がありません。

 

 

皮脂腺が少ない「すね・ひじ・ひざ・かかと」は夏でも乾燥しがちなので、しっかり保湿したいポイント。手のひらでつつみこむように、丁寧にケアしましょう。指先や足先など、体の先端から中心に向かってなじませれば、めぐりを促す効果も期待できます。

 

 べたつきが気になる季節には、塗り方にひと工夫を。さっと伸ばすだけでなく、最後に手のひら全体で再度なじませると、しっかり浸透して、なめらかに仕上がります。

 

参考)ボディ用保湿剤の塗り方

 

毎日、肌に触れることで、肌のやわらかさや浮腫みの状態などの確認の機会にもなります。触り心地が変わってきた、赤みが出ている、カサカサしている、など、変化に早く気付ければ、対処も早くできますね。

忙しい毎日の中でも、自分の体と向き合っていたわる時間をもってもらいたいです。

 

 

まもるケア

 

enStylersの夏の気がかりと言えば、日差しと虫刺され。どちらも炎症を起こして肌を傷つけてしまう恐れがあるので、しっかり対策したいですね。

長袖などの洋服で覆って防御するのはただでさえ弾性着衣が暑い季節にはつらいところ。衣類で覆うだけでなく、コスメの力を借りて肌を守りましょう!

 

 

Hint To Choose

夏になると、たくさんの日焼け止めが店頭に並んで、選ぶのも大変。

気になるのは紫外線カット効果ですが、紫外線には2つの作用があり、それぞれのカット効果がパッケージにも表記されています。

 

SPF値:「SPF30」など数字で表されるもので、肌の表面に届いて、赤く炎症を起こしたり、シミをつくったりする紫外線B波をカットする数値。「50+」が最高値。

 

PA値:「PA+++」など記号で表されるもので、肌の奥深くまで届いて、たるみやハリの低下を引き起こす紫外線A波をカットする数値。「++++」が最高値。

 

肌への刺激や炎症を防ぎたいリンパ浮腫民にとっては、SPF値に注目したいところですね。

 

ただ、数値にばかり目がいきがちですが、日焼け止めを選ぶポイントは毎日継続できる使いやすさ。

通勤やちょっとしたお出かけなどの日常使いならば、SPF値は20~30程度のもので十分と言われています。

 

塗りやすい、ベタベタしたりカサカサしたりの不快感がない、持ち運びやすい、など、自分が気持ちよく使えることが、毎日続けるためのポイント。

色々なタイプが出ていますが、玄関には出がけにサッと使えるスプレータイプ、バッグの中には塗り直しが簡単なシートタイプ、など、普段の行動に自然に組み込む工夫をしてみましょう。

弾性着衣をしている部位に日焼け止めを使う場合は、配合されている粉体成分が繊維に目詰まりしてしまうことがあるので、脱いだ後は押し洗いなどで念入りに洗いましょう。

 

公園やお庭仕事などでは、虫よけも忘れずに。

両方を使う場合は、日焼け止め→虫よけの順番に使うと良いとされています。

最近は虫が嫌うハーブの香りのついた日焼け止めが出ていて、1品2役で手間も荷物も省けるので便利です。

 

 

Care Point 

日焼け止めの効果は、正しい量をむらなく使ったときに発揮されます。量が足りないと、せっかく塗ったのにうっすら焼けてしまったり、塗りむらがあった部分がまだらに焼けてしまうことも!

ミルク・クリームタイプなら、腕や脚など塗りたい部分に線状に出し、手のひら全体で大きな円を描くようにすみずみまで塗り広げます。この時も、肌をこすったり力がかかりすぎないように、やさしいタッチで。

 

 

 

 

スプレーやミストタイプなら、肌から少し離してまんべんなく付けた後に、軽く手でなじませましょう。

どんなタイプのものであっても、少量ずつつけ足すと、塗りむら、塗り残しになりやすいので、規定の量を出して伸ばす方がおすすめです。

 

 

 

日焼け止め効果をキープするには、塗り直しも大切。長時間外出するときは、2~3時間おきに塗り直しを。また、汗をかいたり、タオルで拭いたりしても、日焼け止め効果が落ちてしまうので、塗り直しましょう。

小さなサイズやシートタイプなど、持ち運びしやすいものをバッグの取り出しやすいところに入れておくと、忘れずにケアできますね。

 

 

おとすケア

 

汗や皮脂、さらに肌をまもるための日焼け止めや虫よけなど、夏の肌は色々なもので覆われています。

基本のケアでも大切なのが、肌に付着したものをきちんと落として綺麗な状態にリセットする「おとすケア」。

汚れが残っていると、あせもや湿疹など肌トラブルの原因になってしまう恐れがあるので要注意。さらに、落とすケアがきちんとできていると、その後の「うるおすケア」が届きやすくなるという嬉しい点もあります。

 

 

Hint To Choose

夏の店頭では、バスタイムでの爽快感のために、強い清涼感でスースーするものや、スクラブでマッサージするものなどもたくさん登場します。

肌が薄く弱くなりがちなenStylersは、ジャリジャリした固いスクラブや、強すぎる刺激のものは避けて、夏のほてった肌をやさしくケアしながら洗えるものを選びましょう。

からだを洗うものも、ザラザラしたナイロンスポンジよりも、やわらかいタオルやガーゼがおすすめ。ボディソープ類も、肌を包み込んでやさしく洗えるように、泡で出てくるタイプや、肌とのクッションになるジェルタイプを選ぶのも手ですね。

 

 

Care Point 

落とすケアでは、つい汗や汚れを落とそうと、ゴシゴシこすってしまいがち。でも、洗う時の過剰な刺激も肌の負担になってしまいます。

タオルやスポンジの摩擦ではなく、泡の洗浄力で汚れを落とすイメージで、やさしく丁寧に洗うことがポイントです。

また、石けんやボディソープをそのまま肌につけている人はいませんか?そのままだと洗浄力が強すぎて、刺激になってしまうことも。水を少しずつ加えながら良く泡立てて、たっぷりの泡をつくりましょう。

 

 

 

そして、enStylersにおすすめなのが、手のひらを使った「マッサージ洗い」。

たっぷりの泡を乗せた手で、やさしく触れながら洗うことで、刺激を避けながら、肌の状態をチェックできて一石二鳥。毎日のバスタイムで行う「ながらケア」を日常生活の一部にできると続けやすいですね。

 

 

 

吉備 悠理(きび ゆうり) 

健康科学に興味を持ち2016年に東京大学医学部健康科学科に進学。看護学を専攻。服飾サークルに所属するなどファッションへの関心も高く、看護分野におけるファッションの意義を考え始め、医学看護学の枠にとらわれない形でファッション×看護に取り組むために、卒業後、アパレルメーカーへ就職。ファッションを社会生活における重要なツールと捉え、ファッションを通じた生活支援を目標として情報発信などを行う。 大学時代、がん看護の授業で出会ったリンパ浮腫の写真に「むくんだらお洋服はどうすれば良いの?」という素朴な疑問を抱き、リンパ浮腫患者のファッションの研究に着手。卒業研究では、自身でイラストと文章を作成し「リンパ浮腫とうまくつきあうスタイルブック」を開発した。研究論文は「リンパ浮腫管理の研究と実践」第8巻1号に掲載。

「リンパ浮腫とうまくつきあうスタイルブック」

「リンパ浮腫管理の研究と実践」

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