むくみ予防や改善に効果的な着圧(弾性)ソックス。
下半身の血液やリンパ液を心臓に戻すふくらはぎの筋肉をサポートすることでむくみをケアできますが、近年、サイズの小さすぎる製品を長時間着けるなどの望ましくない使い方が原因のトラブルも増えています。
本記事では、産婦人科医でありプロボクサーでもある高橋怜奈先生に、encyclo水田がインタビュー。高橋先生が低血圧や立ちくらみに悩んだ研修医時代に着圧ソックスを履いていた経験談から、着圧ソックス・レギンスの正しい選び方、そして女性が目指したい「キレイ」の本質についてもアツくトークしました。
キレイを追求したい全ての女性、必読です!
産婦人科専門医、医学博士、がん治療認定医。 渋谷文化村通りレディスクリニック院長。東邦大学医療センター大橋病院非常勤医師。産婦人科医YouTuber高橋怜奈として、YouTubeやTikTokで医療情報の発信を行う。
着圧ソックスを履くきっかけは低血圧
水田:
高橋先生も着圧ソックスを履かれているとお聞きしました。きっかけは何だったのですか?
高橋先生:
私は起立性低血圧で、学生の頃から血圧が上がりづらく、朝礼で校長先生の話を聞きながら倒れちゃうような体質だったんですよ。医師になってからも、長時間立ちっぱなしの手術中に気持ち悪くなって意識が遠のく、みたいなこともあったりして。
着圧ソックスを履き始めたのは、研修医時代です。なんとかして起立性低血圧を治さなきゃと思って。朝ごはんを食べるようにしたり、運動をするようになったり、それと組み合わせて着圧ソックスを履くようになりました。低血圧は、ちゃんと運動をするようになってから徐々によくなり、ボクシングをするようになってからはより改善された感じです。
水田:
起立性低血圧の改善のために履き始められたのですね。
高橋先生:
そうなんです。女性だと、立ちくらみしてしまう方は結構多いですよね。そういう方って、朝起きるのが苦手だったり、脚の筋力が不足していたり、血圧が上がりづらいなど、共通するような特徴があります。私はそのような方には着圧ソックスをおすすめして、履いてもらうと結構改善したりしていますね。もちろん、着圧ソックスだけが改善法ではないですが、むくみがあったり、脚に血流がたまっていたりすると上半身に血液を上げられないので、脳に流れる血流が減って立ちくらみを起こしている場合が多いんです。
水田:
下半身に血液がたまって上半身に血流が行きづらい悪循環が加速する、ということですね。納得です…!
高橋先生:
そうですよね、女性は男性よりも血圧が低い場合が多いので、急に立ちあがった時に血圧が上がりにくかったりするんですよね。脚の筋肉がしっかりついて、むくみもなければ血液がちゃんと上半身に行くんですけど、そうでない場合は立ちくらみが起きやすくなるんです。
水田:
以前入院したときに、トイレの全個室に「いきなり立ち上がらないで」とか「りきみすぎるとクラっとするから立ち上がらないで」と貼紙があったのを思い出しました。
高橋先生:
確かにそういう貼紙、ありますよね。実は、排便の瞬間は「迷走神経反射」という現象が起きやすくて、一時的に意識を失って倒れてしまうことがあるんです。迷走神経反射のメカニズムは立ちくらみとは少し異なります。
でも、入院中、たとえば手術後などに急に立ちあがると立ちくらみしてしまう原因は、血圧が低い状態で脚の方に血液がとどこおっているからです。手術後は血栓予防のために着圧ソックスを履いてもらったりもしますが、女性の立ちくらみ防止にも効果が期待できると思っています。
少ない筋肉量を着圧ソックスで「補助」する
水田:
立ちっぱなしの手術中に気分が悪くなってしまうのは、医師としては致命的ですよね。
高橋先生:
そうなんですよ!でも、女性医師だとそういう方は結構いますね。
私自身は、着圧ソックスを履いたり運動をしたりして、全然立ちくらみはなくなりましたね。
産婦人科クリニックにいらっしゃる患者さんから立ちくらみについて相談された時は着圧ソックスをおすすめしていますが、循環器内科の先生も起立性低血圧の改善に着圧ソックスをすすめているとおっしゃっていましたよ。
▲診療時間の合間にインタビューに答えてくださった高橋先生
水田:
そうなんですね!根本的に大切なことは下半身の筋肉をつけることで、着圧ソックスはその補助的役割を果たす、という感じでしょうか。
高橋先生:
おっしゃるとおり、補助的な役割として重要です。男性は筋肉がしっかりあってポンプ機能が働いているのですが、そうではない女性は、特に補助があったほうがいいと思います。
脚にしっかり筋肉のある男性の先生でも、手術中は着圧ソックスを履いている方も見かけますね。手術中は足をあまり動かせないのですが、長時間の手術だと脚がむくんでだるくなるので手術のときは着圧ソックスを履いてるとおっしゃっていました。
「着圧で締めつければ足が痩せる」の誤解
水田:
最近、着圧レギンスが若い女性の間で流行っているみたいで、SNSでもいろんな広告が出ています。
高橋先生:
わかります!心配になってしまうような広告とかもありますよね!片方だけ着圧を履いたら片方の足だけすごく細い、みたいな(笑)。
水田:
そうなんです(笑)。
着圧ソックスのメーカーさんとか工場の方と話していても、最近需要が増えているとおっしゃっていました。医療機器として届出を出している製品を作っている工場から見ると、不安なつくりの製品がとても増えているそうですし、健康に危険な使い方をしている方も増えているそうなんですね。とにかく一番小さいサイズを買って24時間履く、みたいな。
高橋先生:
それは体によくないですね。しかもそれで「痩せる」って誤解している方もいますよね。
結局、あまりにも締めつけすぎると逆に血流が悪くなるんですよね。そうすると代謝も悪くなるし、悪循環です。ですから、適切なサイズできちんとした使い方をするのがとても大事だと思いますね。
着圧ソックスもレギンスも、キツければキツいほど効果が高いというわけではありません。履いているときには細く見えても、キツくしたから足が痩せるわけではないんです。適切な着圧ソックスを使ってむくみを予防すれば脚の血流がよくなるので、余計な脂肪はつきにくくなるとは言えると思います。
水田:
なるほどなるほど。正しく着圧すると、「むくみを予防する」「血流がよくなる」「酸素や栄養が届くようになる」「脂肪がつきにくくなる」、だから「太りにくくなる」ということなんですね。
高橋先生:
そうです、そうです! 締めれば締めるほどいいわけじゃないですし、締めて細くみえるのはあくまで一時的なものですからね。
着圧ソックスやレギンスは正しく作られた製品を正しく選んで
高橋先生:
MAEÉさんの着圧ソックスは医療機器登録をしているのですね。
水田:
はい、登録をしています。市販されている着圧ストッキングやソックスなどには、医療機器として届出を出して販売している製品と、届出を出さず「雑品」として販売している製品がありますね。 雑品として売られている製品は、「むくみ軽減」「血行促進」といった効能効果を謳うことはできません。SNSで広告が出ている製品のなかには医療機器として登録されていないものも多いようです。
医療機器登録がある製品は、人の生命・健康に与えるリスクが極めて低いとされる高い品質基準を認められている製品です。ですから、同じ着圧の製品でも、医療機器の届出がなされている製品が安心だと言えます。
高橋先生:
品質の点からも、やはり医療機器登録されているものを使ってほしいですね。
水田:
2011年に国民生活センターからある通達*が出ました。着圧レギンスによる健康被害が多くなっている実態を受け、市販で流通している十数本の製品を集めて調査した結果が発表されていました。
*「加圧を利用したスパッツの使い方に注意!」平成23年4月8日 独立行政法人国民生活センター
着圧ソックスやストッキングなどを医療機器に登録するためには、足首の圧迫圧が強くて、太ももにいくほど段階的に圧が弱くなっていなければいけません。ですから医療機器として販売されている製品は必ずそういうつくりになっているんです。
けれども、医療機器ではない「雑品」の製品は、足首と太ももの圧力が逆転していたりとか、どこも同じ圧迫圧だったりとか、ただ単に小さく編んで締めつけているだけだったりの商品もあって。調査によると、そういった製品で健康被害が起きているということなのですが、「着圧=健康被害」みたいなイメージだけが独り歩きしてしまっていたりもします。
▲「着圧ストッキングやソックスは品質のよい製品を正しく使っていただきたいです」(水田)
高橋先生:
ただしく着圧するには、やはり医療機器登録されている製品を使ってほしいですね。 着圧ソックスそのものにネガティブなイメージを持っている方もいるんですね。
水田:
はい、通達のなかで「40hPa以上の着圧は危険」といった記載があったので、「40hPa以上の製品は全て危ない」と思っている方もいるようです。ただ、記載されていた内容をよく読むと、「圧迫圧が段階的になっていないものが危ない」「40hPa以上の圧力が太ももと膝にかかると血行障害を招く」ということなんです。
MAEÉのコンプレッションストッキングとタイツは、足首の圧迫圧が最大43hPaですが、ふくらはぎは最大34hPa、太ももは最大22hPaと段階的に圧迫圧が低くなっており、血行やリンパの流れを正しくうながす構造になっています。着圧ソックスは正しく選んできちんとつければ味方になってくれることを知ってもらいたいです。
キレイの王道は「食べて運動」の基本を守ること
高橋先生:
小さすぎる着圧レギンスを選んで締めつけすぎる方がいる、と先ほどお話がありましたが、中世ヨーロッパの女性が着けていたコルセットと同じですよね。ドレスの下にコルセットでキュッと締めつけてましたもんね。最近、若い女性の間でも流行っているみたいですけど。
水田:
そうなんですよね。
インフルエンサーの女性が「痩せる秘訣」として、コルセットを常につけて食事の量を減らす、なるべく小さい着圧を履いて美脚にする、みたいなことを発信している動画を見ました。
高橋先生:
コルセットを付けて食事量が減ったなら、それは食事量が減って痩せたわけであって、コルセットを着けたから痩せたわけじゃないですよ(笑)。しかもああいった発信はほとんどがPRで、コルセットうんぬんというより、彼女たちは本当に食べてなくて痩せてるんですよね。ほんとそれはよくないなって思います。
水田:
心配になりますよね。
高橋先生:
普通に運動すればいいのに、と思います。しっかり食べて、たんぱく質もちゃんととって運動したほうがキレイになるし、同じもの食べても太りにくくなります。でも「無理なく一瞬でやせる」みたいなものがSNSで「バズり」やすいんでしょうね。
水田:
しっかり栄養をとって、筋肉をつけて、血流のめぐりをよくする。一見遠回りに見えて、これがキレイへの近道であり王道であるということですよね。先生、今日は貴重なお話をありがとうございました!