2023年10月に発売を開始したMAEÉ(マエエ)の新製品「コンプレッションソックス」。
やわらかな印象の「コットンリブタイプ」と、後ろに個性的なラインが入った「ラインタイプ」、2タイプ5カラーの展開で、発売以来大好評をいただいています。本記事では、水田と齋藤、MAEÉのふたりがコンプレッションソックス開発の舞台裏を振り返りました。
手軽なむくみケアを多くの方に届けたい!がスタートライン
―ソックスを開発しようと思った経緯を教えてください。
水田:
MAEÉでは2020年からリンパ浮腫患者さん向けに開発した「コンプレッションストッキング」「コンプレッションタイツ」を展開し、2023年以降は、リンパ浮腫ではない一般の方のご購入も増えてきています。
ただ、つま先から腰まであるストッキングタイプは、履きなれない人にとってはハードルが高いんですよね。むくみに悩む全ての女性にとっての履きやすさ、そしてファッションへの取り入れやすさを考えたところ、必然的にソックスの開発を考えるようになりました。むくみケアは、重力がかかってむくむ時間帯に、「歩く」などご自身の生活動作を活かせる「日中ケア」がカギだと私たちは考えています。ですから、むくんでしまってからのその場しのぎのケアではなく、むくむ前から、誰もが生活に取り入れられるアイテムが必要だと思ったのです。
▲2020年からむくみケアの着圧ストッキングとタイツを展開
齋藤:
オフィスがある銀座の街中で、ある日とっても素敵なおしゃれをしている方を見かけたんですよ。その時に、この方の洋服が全て体にいいことをもたらしてくれるファッションだったらもっと素敵になりそう、とふと思いついて。MAEÉの製品にそういった考えを取り入れたいな、とずっと考えていました。
水田さんが言ったように、「生活全体」で健康を考えていきたいという思いで、着圧ストッキングを開発したその先にある、例えば私が見かけた素敵な人が取り入れやすくなるような「体に良いアイテム」ってなんなんだろうか、と考えたときに、第二の心臓と言われているふくらはぎをカバーするアイテムで、かつ、気軽にファッションに取り入れられるもの、そして私たちのメッセージが伝わるアイテム、それがソックスでした。
―どんなソックスがいいかについて、具体的なアイデアがあったのですか?
水田:
いいえ。「どんなソックスがいいか」を考えるというより、どういうファッションに組み合わせて、どういう雰囲気で履いてもらえたらいいかな、という視点で考え始めました。「よく歩く日に履く特別なむくみケアソックス」ではなくて、日々のファッションに自然に溶け込むソックスであってほしい。そう考えて、リサーチから始めましたね。
―どういったリサーチをされたんですか?
水田:ソックス屋さんやデパートをのぞいてソックスやタイツの流行を調べたり、SNSやウェブ記事で、大人女性がどういう足元ファッションが好きなのかをチェックしたりしました。社内のおしゃれな人にどんな足元合わせをしているか聞いたところ、ソックスが好きで買い集めている人もいましたが、「履かない」「寒い冬の間だけ履く」と答えた人もいて。普段のファッションに合わせられそうと思ってもらえるソックスをつくることが大切だと改めて感じました。
大人女性が「これかわいい、履いてみたい!」と思えるデザインを
―そこから、コットンリブタイプとラインタイプのふたつのタイプが生まれたんですね。
齋藤:
最初からコットンリブとライン、というふうに絞り込めたわけではないんです。
今どういった足元が支持されているんだろうか、どんなパンプスが人気なんだろうかと靴屋さんを見に行ったり、スカートの丈って今どんな感じなんだろうか、というのも観察したりして。そこから、「ナチュラルなカラー」「遊び心のあるデザイン」というキーワードにたどり着きました。
水田:
世に出ている着圧ソックスって、「着圧ソックス然」としている、黒のシンプルなハイソックスがほとんどで、大人の女性が「これかわいい、履いてみたい!」と思えるようなものが圧倒的に少ないと思ったんですね。では、「かわいくて履いてみたい」ソックスはどんなソックスかな、と考えたときにたどり着いたのが、おしゃれな色であること、遊び心のあるデザインが効いているもの、というポイントだったんです。
具体的には、ソックスの色とコンビカラーになったラインが入っている、リブになっていてニュアンスがある、そういったデザインが、大人が楽しく履けそうだと思ってピックアップしました。私たち自身が「このデザインがそのまま着圧ソックスになったら嬉しいよね?」と思えたデザインです。
齋藤:
私たちがつくりたいイメージを5、6サンプルくらい工場の方に送ったらびっくりされました。MAEÉさんがやりたいことのメッセージがよく分かった、っておっしゃって。これは今までにない着圧ソックスへのアプローチでとてもいい取り組みだからぜひやりたい、と言っていただけたのは、ありがたかったですね。
▲左:コットンリブタイプ(ディープボルドー、ミディアムグレー、ナチュラルブラウン)/右:ラインタイプ(チャコール×レッド、ネイビー×シルバーラメ)
―色は迷いましたか
水田:
迷いました…!糸や布の小さなサンプルがたくさん載っている見本帳のようなものを見ながら選ぶのですが、「これがポイントになっていいかも!」と思って試作してみても、いざソックスの形になって足を通してみると印象が違ったり、足が太く見えてしまったりして。リブタイプもラインタイプもそれぞれ7、8回試作を繰り返しました。
―後ろにラインが入っているデザインは、世の中にはあまり多くないですよね
水田:
サイドにラインがある製品はあるんですけど、後ろにラインがあると美脚見えしそう、と思って採用しました。
▲ラインタイプ(ネイビー×シルバーラメ)
齋藤:
個人的には、ラインタイプは、スッと筋がとおっていて、意志があるようなイメージです。リブは少し柔らかめのトーンを、転じてラインタイプは、自分に自信を持たせてくれる力強さのようなものを表現できたと思っています。これを履くとちょっと自信が持てるスタイリングが完成して、歩いていける、前へ進める、そんな気持ちの後押しのような意味を込めています。ラメだったり、ちょっと強みのある赤い糸を使っているのはそういった理由もあります。
―ラインタイプの、チャコールの地の色にレッドのラインが入っているコントラストは絶妙ですね
水田:
コンビカラーの組み合わせを考えるのは、見本帳の小さい面積ではますますわかりづらかったので、配色を紹介しているウェブサイトを見ながら試行錯誤しました。コントラストはこのくらいが可愛いかも、とか、同系色だとこんな感じかも、とか、画面上でいろいろシミュレーションして、出力して重ねてイメージしてみて、そのうえで糸を組み合わせてみて、よさそうなものを試作して、ちょっと違ったらもう一度試作して、の繰り返しでした。
▲ラインタイプ(チャコール×レッド)
―ネイビーとシルバーラメのラインも、ありそうでない組み合わせです。
水田:
いろいろな糸を見ていく中で、ちょっとキラっとする素材がいいね、ということになりシルバーラメを検討し始めたのですが、一般的なシルバーラメの糸は裏側が毛羽立っていて、ラメ糸がチクチクするものが多かったんです。MAEÉの製品は単なるファッションソックスではないので、肌がチクチクするとか、ガサガサして気になるとかはNGだな、とあきらめかけていたんですね。そうしたら、メーカーさんが、チクチクしないラメ糸が昔あったことを思い出して見本帳から引っ張り出してきてくださって。キラっとするけれども肌触りがよいそのラメ糸を発掘して実現しました。
齋藤:
色やデザイン性と並行して、着圧という機能面、そして技術的な面も含めてどれがいいんだろう、とメーカーさんが試行錯誤してくださって。こちらがやりたいことをパッと理解してくださったので、試作品から完成まで3,4カ月と本当にスピーディーに進めていただきました。
足元のファッションを楽しみながらむくみケア
―どんなファッションの方に履いていただくイメージですか?
水田:
カジュアルも、ちょっとしたお出かけも、デイリー使いも、いろんなファッションの好みの方に「ちょっとファッションが楽しくなりそう」と思ってもらいたくて開発しました。ベーシックと遊び心のバランスは絶妙なところを狙いたいと思って。
「赤いライン?」とびっくりするかもしれないけれど、ベースはチャコールなので取り入れやすいし、「ラメ入り?」と思うけれども、シルバーなのでモノトーンにも合わせやすかったり。いろんな人に「意外といける!」と思っていただきたいですね。
リブタイプの着用イメージも、ボーダーニットに合わせているカジュアルなシーンもあれば、お出かけ感のあるプリーツスカートに合わせたものもあって。オン・オフどちらも、また、幅広い年代、スタイルの方に着ていただきたいですね。さらりとしたナイロン混素材(ラインタイプ)とふんわりしたコットン混素材(コットンリブタイプ )をご用意したので、ソックスでのおしゃれを季節問わず年中楽しんでいただきたいとも思っています。ご購入された方から、「普段あまりソックスは履かないけど、なんかいいかも」、といったご感想をいただいた時はとてもうれしかったです。
齋藤:
お出かけ前の楽しい準備の時間に「あぁ、たくさん歩くと疲れそう心配だな」といったネガティブな気持ちになってほしくないんです。準備して、お出かけして、家に帰るまで、「今日も一日幸せだったな」と思ってもらえるようなお手伝いができればと思います。
▲コットンリブタイプは、パンツスタイルにもお出かけスカートにも合わせやすい色味
―足元のおしゃれを楽しみながらむくみケアもできるのは嬉しいです
水田:
買ってくださった方が「履きやすいのに意外とキュッとする」と言ってくれて。
一般的にドラッグストアで売っている着圧ソックスは20hPa前後のものが多いのですが、このコンプレッションソックスは29hPaなんですね。引き締め効果は高いのに、圧迫が全然気にならなくてつい毎日履いちゃう、というお声もいただいて。着圧を実感しつつ普段使いができる、というあたりもいいバランスが取れたように思います。
―29hPaという数値はどうやってたどりついたのでしょう?
水田:
数値を狙ったというよりも、履いた時の実感値や心地よさから、この数値に落ち着いた、という感じですね。足首とふくらはぎの圧迫のバランスがなんだかしっくりこなくて、最後に調整したりもしました。足首から段階的に圧迫を弱めていく目安となる数値はあるのですが、数値が全てではなくて。素材の厚さや伸び具合によって体感が違うので。そこから履き心地で調整していった感じです。
圧迫圧の調整や色味の調節と並行して、ソックスの長さ、つまさきやかかとの仕様、履き口の処理の仕方など、デザイン面と機能面を並行して調整しながら作っていきました。過去にたずさわっていた化粧品の開発だと、ビーカーサイズで小さくクイックに薬品を入れてすぐに試作ができるのですが、ソックスの試作は、糸を手配したり、編み機を確保して試編みしたり、手作業が発生したりと「すぐに試作」というわけにいかなくて、時間がかかることも経験しました。
▲リブタイプは最大28hPa、ラインタイプは最大29hPa
肌触り、履きやすさ、洗濯後の状態を繰り返しチェック
―工場も訪問されたと聞きました。
水田:
そうなんです。コンプレッションソックスは奈良県の老舗靴下工場で作っていただいています。むくみケアの機能が国に認められた「一般医療機器」であるコンプレッションソックスを作るには厳しい基準があります。医療グレードのソックス、というシビアな条件のもと、本当に丁寧に作っていただいているのを目の当たりにし、感動に包まれました。靴下を作るのには想像以上の手間がかかるということを知りましたし、身が引き締まる思いでした。
試作の途中で、先ほどお話したチクチクしないラメ糸は、洗濯を繰り返すと糸の端っこが飛び出てきてしまうことがわかりました。編み方を工夫していただいてその問題は解決したのですが、やはり、色を決めて編み機を設定すればはい終わり、ではなくて、実際に使ってみるとこうなってくるからこう工夫して欲しい、といった微調整をしていただいて完成しました。
齋藤さんが試着したものは大丈夫なのにわたしが試着したものはすぐボロボロになったりして、使っている洗濯機の違いかしら、なんて笑ったりもしました(笑)。でも、お客さまには期待を持って買っていただくので、すぐボロボロになったりしないよう、試作品の洗濯後のチェックも欠かさずおこない、微調整を繰り返しました。
齋藤:
履き心地も結構な数を試しましたね。右脚と左脚、違うものを履いて一日様子をみたり。いろんなタイプのシューズとの相性も試してみましたし、家族や友人に着圧ソックスであることを伏せて試してもらってどんな感想がくるかを待つのも個人的には楽しい試みでした。普段から「良いもの」を見極める目のある彼女たちが、「このソックス気持ちいいけど何?」って口をそろえて聞いてくるんです。
あとはやはり、洗濯の検査ですね。ネットに入れて洗濯したら大丈夫だったから次はネットに入れずに乱暴に扱ってみようとか。もちろん、大手メーカーさんのように何百回も検査できたわけではないですが、できる限りのチェックをしました。
また、私たちの年代は「ばね指」で指先が痛くなってしまう方も少なくありません。そういった方が履くことを考えて、履きやすさもこだわりました。あまり強圧にしすぎず、するっと履いていただけるもの。ファッション的にも素敵だし履きやすいから手に取ろう、という気持ちになるようなデザインと履き心地、履きやすさには最後までこだわりました。ひざの周りが痛くならないように履き口は柔らかい編みにしてあるんです。
▲履き心地や履きやすさにもこだわりました
「これ履いて今日も頑張るぞ」の声に支えられて
―ソックスのご購入者の方からもお声が寄せられているそうですね。
水田:
発売直後に購入してくれた知人は、今、病気の治療で定期的に通院しているのですが、「これ(コンプレッションソックス)履くとなんか気合がみなぎる感じがするから治療に行くとき毎回履いているんだ」ってメッセージをくれました。「これ履いて今日も頑張るぞ」ってSNSに写真を上げてくれたりして。誰かの「前へ進もう」という気持ちを後押しできるなら、こんなに嬉しいことはないですね。
「ふくらはぎのホールドが気持ちいい」(通勤時間長め、着圧ソックスのヘビーユーザー 30代)
「医療用だから結構締め付けられるのかなと思ってたけど、めちゃくちゃ心地よい圧で快適!」(育休から復帰。からだケアをしたい 40代)
「ゴルフの時に履いて走りまくったけど疲れなかった!」(スコアはイマイチでもゴルフ大好き 50代)
▲理学療法士の金子真紀代先生がSNSに投稿してくださいました!「1日履いていても全く違和感なく痒くもならない。そして気持ち良い生地で履きやすい~」というコメントが嬉しいです!
▲山菜取りやキャンプが趣味の友人。むくみやすいという彼女からも「歩くそばからマッサージされてるみたいで気持ちいい…!」とうれしいコメントが!
齋藤:
通勤で東京駅を使うのですが、駅を歩いているといろんな方の足元に目が行きます。中には着圧ソックスらしきモノを履いている方もチラホラ。でも他社の着圧ソックスって、分厚かったり、黒しかなかったり…。ある方は、素敵なファッションをされていたので、この日は恐らく、大事な日。だから全身おしゃれして、疲れ防止に着圧はいて…、でも足元だけがこの方にしたらちょっと浮いてる感じ…。きっと悔しいんじゃないかなぁ、おしゃれを全うできなくて…なんて、勝手に想像したりすることもあります(笑)。
健康になるためのグッズがもっともっとファッショナブルになって欲しいと思いますし、今後私たちのブランドがその一端を担えていけたらいいな、とワクワクしてもいます。銀座発、大人女性のためのおしゃれな着圧ソックスを、ひとりでも多くの女性に体感していただけると嬉しいです!私たちはもっと健康に、もっと素敵になれるはずだから!