リンパ浮腫の初期症状、見逃さないで!~林先生が教える「リンパ浮腫のはじまり」サイン~


              リンパ浮腫の初期症状、見逃さないで!~林先生が教える「リンパ浮腫のはじまり」サイン~

乳がんや婦人科がんの治療でリンパ節の切除や放射線治療、化学療法を受けた方のなかには、「リンパ浮腫」というむくみの後遺症を発症する方がいます。自分もいつか発症するかも…と不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、リンパ浮腫治療がご専門の林明辰先生(亀田総合病院 亀田京橋クリニック リンパ浮腫センター センター長)にインタビュー。見逃しがちなリンパ浮腫の初期症状と、その対処法についてお話をうかがいました。

林 明辰(はやし あきたつ)先生 


リンパ浮腫(ふしゅ)治療の第一人者として、診断に用いる最先端技術を世界で初めて発表。「教えて!林先生」シリーズでは、数多くのリンパ浮腫患者さんの治療を通して、一般の方のむくみのお悩みに寄り添うアドバイスをいただきます。週3日のランニングがルーティーン。3児の父。亀田総合病院/亀田京橋クリニック リンパ浮腫センター センター長

がん治療後に多い「リンパ浮腫」とは

―「リンパ浮腫」とはどういった病気ですか。

リンパ浮腫は、リンパの流れがとどこおり、腕や脚にむくみが生じる病気です。患者さんの多くは乳がんや婦人科がんの手術でリンパ節を切除した方や、放射線治療、化学療法などを受けた方です。

国内の患者さんの数は約15万人と言われていますが、これは腕や脚が太くなってから診断された患者さんの数で、実際はもっと多くの方が初期症状に気づかず放置している可能性があります。

リンパ浮腫のはじまりサイン

―リンパ浮腫は気づきにくいのでしょうか。

はい。気づきにくいと言われています。

多くの病院で、患者さんにはリンパ浮腫の可能性について説明はしていると思います。しかしながら実情は、初期症状のサインを見落としてしまい、実際に腕や脚が太くなるまで気づかないケースも多々あります。また、腕や脚が太くなる前の状況ですと、「だるい」「重い」という患者さんの症状を医療者が一時的な後遺症だと判断する可能性もあります。

 

―どういった症状が起きたらリンパ浮腫のはじまりの可能性がありますか。

目に見える「むくみ」だけではなく、「ドライヤーがかけづらい」「洗濯物が干しづらい」など、日常生活での動きに違和感があるな、と思ったら初期症状かもしれません。やみくもに不安がるのではなく、ご自身が感じる違和感を軽視したり見落としたりしないことが大切です。

 

 

リンパ浮腫は初期のケアが大切

―リンパ浮腫かもしれない、と思ったらどこに相談すればいいですか。

まずはかかりつけの病院に相談しましょう。

リンパ浮腫の原因は「リンパ管」という、血管のように全身に張りめぐらされている管がつまってしまうことです。残念なことに、リンパ管は一度つまったり破れたりしてしまうと、元に戻ることはありません。また、リンパ管から浸み出たリンパ液が皮膚の下にたまると、脂肪が沈着したり組織が硬くなったりする(繊維化)のですが、この症状も元に戻すことはできません。ですので、いかに早く見つけて治療を開始できるかが、何より大切なのです。

 

―リンパ浮腫の治療はどのようなものがありますか。

基本的な治療法は、圧迫療法、リンパドレナージ、スキンケア、圧迫しながらの運動などがあります。また、そうした治療に加えて外科手術を選択する場合も少なくありません。ご自身にもっとも適した治療を選択するためには、リンパ管の造影検査などでリンパ管の状態を客観的に調べることが必要です。

リンパ浮腫の重要な治療法は「圧迫療法」

―リンパ浮腫の初期症状が出た方の治療法にはどんなものがありますか。

「圧迫療法」は重要な治療法のひとつです。圧迫療法とは、通常のストッキングよりも圧の強い「弾性ストッキング」や腕用の「弾性スリーブ」を日常的に身に付けて圧迫する方法で、もっとも手軽で有効な治療法であり予防法でもあります。

 

―弾性ストッキング「MAEÉ(マエエ)」の特徴を教えてください。

MAEÉ(マエエ)」は、早期や軽度のリンパ浮腫患者さん向けに開発された弾性ストッキングです。リンパ浮腫早期に症状が出やすい下腹部やそけい部、太ももに工夫がほどこされています。食い込みが少なく、無理なく着用を始められますし、履き続けられるように思います。

弾性ストッキングの色味や分厚さなどの選択肢はこれまで限られていました。

MAEÉは、季節の変化が大きく夏は高温多湿、という日本の気候に合うよう開発されました。また、肌なじみがよく透け感もあるベージュ、どんな服装に合わせやすいブラックというバリエーションがそろっており、3040代の女性にも「抵抗なく履くことができる」と好評です。

これまで、弾性ストッキングは、圧迫圧を中心に選択されてきましたが、長く使っていただき効果を得るためには「しっかり継続できること」が重要なポイントになります。そうした意味でも、MAEÉは、症状が出始めた早期の患者さんに最初におすすめしたい選択肢のひとつだと考えています。

―林先生は、リンパ浮腫の早期治療に特に力を入れておられるそうですね。

はい。私自身は形成外科医として手術に関わることが多いですが、リンパ浮腫治療では保存療法がとても重要だと考えています。ですから、今後もこれまで以上に、リンパ浮腫の予防、そして運動療法や栄養指導なども含めた保存療法に力を入れていきたいと考えています。

 

―私たちMAEÉも、リンパ浮腫患者の皆さんが少しでも快適に過ごせるようなケア、そして、早期からのリンパ浮腫ケアをこれまで以上に広げていきたいと思っています。リンパ浮腫ケアで大切なのは、医療者と患者さん本人のセルフケアの二人三脚ですので、これからも林先生とご一緒に情報発信していきたいと思います!本日は、ありがとうございました。


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